切ない状況説明文24題 (7〜12)





 7・きっと、顔を見たら言えなくなってしまう(修一)


 例えば、

 抱きしめたいとか
 口付けたいとか
 俺だけのものにしたいとか

 「とても面と向かっては言えねぇなぁ」
 「いや、だからって後ろ向いてりゃ言っていいってことはねぇから。
 ばっちり声に出してるから。
 つーか修兵さんあんたとりあえず 帰 っ て く れ 。」





 8・絡まった指が離れた瞬間、世界が崩れた(日一←乱)

 戯れに絡めた指先から、ぽろぽろと零れていくあたしの想い。

 ああ―――ごめんね、一護。
 どうしてあたしは自分の首を絞めるようなことばかり。

 でもあたしついに思っちゃったのよ。
 この指が永遠に離れなければいいなんて。
 あんたがあの人のものだって分かっててそれでも離したくないなんて。
 そんなのは絶対に許されないことだって知っていても。

 脆くも崩れ去るあたしの薄っぺらな虚構。
 さぁ早く行きなさい。そうしてあの人の手を取るといい。
 でないと、もう一度この手を伸ばしてしまいそうになるわ。





 9・死ぬまで愛し続けるのが僕の誇り(ディ一)

 まだ出会ってほんの数分じゃないか。
 でもほら、俺はこんなにも君の事が好きなんだ。
 これが噂の一目ぼれってやつじゃん?
 その飴玉みたいな綺麗な瞳に、見つめられるだけで(正確には睨まれてるんだけど)どきどきするんだ。

 なのに俺もう殺されんの? ひでえな!

 ああでも、でもさ、死ぬ最後の瞬間まで好きな人に見つめられて(睨まれて)るってのも良いかもなぁ。
 そんで俺は、死ぬ最後の瞬間まで君の事をあいしてるんだ。
 うーん、俺って結構ロマンチック?





 10・幸せが欠けても、君が幸せであるように祈り続ける(ギン←一←イヅ)

 なんて声を掛ければいいんだろう。
 あの人を愛していた君に、なんて。
 あの人を止める事の出来なかった僕が、なんて。

 「きっと君のところへ帰ってくるよ」

 こんな台詞じゃ君も僕も誰も幸せになんかなれないのに。
 それでも笑って欲しいなんて思うのはきっと僕の幸せのためであって君の幸せのためじゃない。
 どうしたって言葉にすればそれは僕の幸せに繋がるのだから、
 せめて心で思うだけなら少しは君への祈りに似るだろうか。





 11・遠くへと赴く君が幸せになる筈がないと僕は運命論者のように信じた(雨一)

 「何だよ石田、何か用か?」
 「いや…」

 視線を外して緩く頭を振ると、そうかと踵を返して君は再び歩き出す。
 今この瞬間、僕がどれだけ物騒な事を考えているかなんて君には分からないだろう?

 その細い脚を砕いて、二度と歩く事が出来ないようにしてしまおうか。
 その鮮やか過ぎる髪も、琥珀に揺れる瞳も、全てを閉じ込めて誰の目にも触れないように。

 そうしなければ、君はまた行くのだろう。
 黒き衣を纏う者たちの世界へ。
 君を、虚の、虚に襲われた人の、そして君自身の血で赤く染め上げる戦場へ。
 いい加減に気付くといいよ。君は、

 僕に囚われてしまう方がずっと幸せなんだって。

 「黒崎、やっぱりちょっと来てくれないか」

 さて君の、運命や如何に。





 12・一瞬の積み重ねが、二人の時間を長くしていく







2006.9.3(7,8,9,10,11) sakuto kamunabi BLEACH TOP