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 Whom do you choose?





「お兄ちゃんお帰りなさい!みてみて、すごいよー!」

「おお?」


誕生日だからといって特別どうという事はないのだが、それでも妹の焼いてくれるケーキは楽しみだ。

それなりに上機嫌で帰宅した一護を出迎えたのは、やけにきらきらした瞳で見つめてくる家族と、

綺麗に包装されたプレゼントの山だった。


「な、何だこれ…」

「何だじゃないよ一兄!コレ全部一兄への誕生日プレゼントだよ?」

「はぁ?」

「もうお兄ちゃんたら隅に置けないんだからー!あんな綺麗な人といつお知り合いになったの?」

「はぁ…」


いまいち事態が飲み込めていない一護に、夏梨が一枚のメモのようなものを差し出した。

そこには、綺麗な筆文字で祝いの言葉と、今日は家族で過ごすのだろうから贈り物だけ置いていく旨と、そして。


『そのかわり、明日はこっちに顔出してよね!待ってるわよ~vv』


「…松本さんか…」


思わず笑ってしまったが、こうして気に掛けてくれるのはとても嬉しい。

わざわざプレゼントまで持ってきてくれたのだから、明日は当然尸魂界まで行ってきちんと礼を言わなくては。

が、そうして一護があちらの世界に思いを馳せていると、二人の妹がじっとこちらの様子を伺っているのが

視界の端に映った。

…何だその、期待に満ちた目は。


「ねぇねぇ一兄、あの人松本さんっていうの?」

「あ?ああ、金髪で、その…スタイルのすごい人だろ」


我ながら微妙な表現だ。


「じゃあその人がお兄ちゃんの本命!?」

「はぁ!?」


また訳の分からない事を言い出した遊子に目を剥いていると、もう一人の妹が更によく分からない事を

言い出し始めた。


「えー、でも歳違いすぎないか?あたしは、あのお団子頭で背の低い可愛い子だと思ったけどな」

「そうかなぁ?でもお兄ちゃんて年上の女の人が似合うと思うの!」

「ちょ、ちょっと待て。お団子って…雛森さんか?あの人も来たのか?」


多忙な筈の副隊長が二人も来たのだろうか。ありがたいが、あとで冬獅郎に怒られそうだ。


「あの人もって、何言ってんの一兄。あれ全部、それぞれ持ってきてくれたんだよ?」

「え…」


指差す方を見れば、確かに言われて見れば一人二人とは思えない量の包みが積まれている。

だが、先程名前の出た二人以外に一体誰がわざわざ自分の誕生日にこんなところまで来たというのだろうか。

…なんて、疑問に思う暇もなく。


「それとも、更に年上っぽい前で長いみつあみしたあの大人の女の人?」

「あ、それだったら、あの眼鏡のお姉さんは?きりっとしててかっこよかったじゃない」

「ちょっと気弱っぽいけどグラマーな銀髪のお姉ちゃんとか、元気な妹さんとか??」

「無口で無表情だったけど、あのミニスカでみつあみの女の子も一兄のこと狙ってると思うなー」

「じゃああの細いつり目のお姉ちゃんとか…あ、まさかまさか、私達よりちっちゃいピンクの髪の女の子って

ことはないよね!?」


…などなど。

延々続く誰だか分かるような分からないような人物描写を、一護は痛む頭を抱えて聞いていた。何だその人数は。

そんな隊長格ばかりがほいほい抜けてきて尸魂界は大丈夫なのか!?

というか、そんな人数が押しかけてきて近所迷惑にならなかっただろうかと少々失礼な事まで考えてしまった。


「ねぇねぇお兄ちゃん!それで、」


「「一体誰が本命なの!?」」


「あーもう!うるせぇ!!てか本命とかそういう問題じゃねぇだろ!みんな普通に厚意でくれてんだよ!

馬鹿みたいな事考えてんじゃねぇ!」

「「えぇー!!」」


ぶーぶーと文句を言う妹たちを押しのけて、一護は二階へ上がると、着替える間もなくベッドへと倒れこんだ。

祝ってもらっているはずなのだが、…酷く疲れた気がするのは気のせいにしてしまいたい。





「何をしておる松本乱菊」

「ひえぇっ!!…あ、あらま夜一様こそどうなさったんですか」

「何、今日は一護の誕生日であろう。祝いの品を届けにな。…それよりおぬし、人の家に聞き耳なんぞ

立ておってからに。見るからに怪しいぞ」

「ほ、ほほほ…いえ、ちょっと忘れ物をして戻ってきたらなにやら気になる話題が聞こえたもので…」

「???」






2006.7.15 sakuto kamunabi BLEACH TOP