Sit down!
「いちごっちゃ〜んっw」
「一護サーンっ!!」
「だーっっもう、ついて来んな!」
今日も今日とて一護を追い掛け回している浦原と市丸。そのあまりの鬱陶しさに毎度の事ながら憤怒の表情の一護だ
が、もうそれすらも楽しいのかいくら怒鳴られようとも二人は一護の後をついて来るのを止めなかった。
いい加減血管でも切れそうな一護を、それでも周囲の人間の中には誰一人助けてやろうとする者はいなかった。幾度
となく繰り返されたその光景に皆、既に慣れてしまったのである。内心助け舟を出してやりたいと思う者もいたであろ
うが、奇人変人と名高い両隊長の報復を恐れ、何も出来ずにいた。
「一護ちゃん今日は三番隊に来てくれる約束やろ?はよ行こ」
「何を言ってるんです?一護サンはアタシと剣術の修行をするんですよ。貴方は早く帰って、溜めた書類を片付けたらど
うなんです」
「それはこっちの台詞やわ。十二番隊でも開発局でもあんさんの事探してはりますよ。一護ちゃんは僕に任せて、とっと
と帰り」
「良いんですよアタシは。みんな優秀ですから一日くらいいなくても大丈夫なんです。それより、貴方に一護サンを任せ
るだなんてそんな恐ろしい事出来るわけないでしょ」
「あんさんと二人にするよかマシやと思うわ。また此間みたいに一護ちゃんに変な薬でも盛られたらかなわんもん」
「あれは貴方だって使ってみたがってたじゃないですか。アタシよりよっぽど貴方のほうが危ないですよ!ねぇ、そう思
いません一護サンっ…」
「だーーーっっっ!煩い煩い煩いっ!!!」
ああ、ついに一護が切れた。
護廷の隊長格とは思えない阿呆の様な言い争いにうんざりしていた周囲は、けれどこれで騒ぎが収まるわけではない
ことを知っていた。どんなに一護が言ってもさっぱり言う事を聞かない二人は散々言い争った挙句、結局最後にはどち
らか、もしくは二人が一護を引きずって行ってしまうのだ。
今回もまたそうなるのだろうな、ご愁傷様だ。
…なんて事を思っていたのだが。
今日の一護は、いつもとは一味違っていた。
ぎっ!と二人を怒りの表情で睨みつけ、そして。
「い、一護サン?」
「一護ちゃん、どないした?」
怒った顔も可愛いなぁとか思いつつあまりの一護の剣幕に大人しく言葉を待っていると。
人差し指をびっと鋭く二人の眼前に突きつけ彼は叫んだ。
「おすわり!」
ばさばさ、と何処からか書類をばら撒く音が聞こえてくる。それ以外、まるで音が存在しないかの様な沈黙の中、あ
まりに信じがたい光景に周囲は思い切り固まっていた。
一護の言動も驚きだがもっと信じられないことに。
二人の隊長は、一護に指を突きつけられた次の瞬間驚くほど素直に、ぺたん、とその場に座り込んでしまったのである。
目をぱちくりと瞬かせて、どうやら本人たちが一番驚いているようである。呆然とただ一護を見上げるだけだった。
そんな茫然自失状態な二人を気にするでもなく一護は大人しく従った事に気を良くしたのか、「よし。」と二人の男
の頭をわしわしと撫で回し、満足気に微笑んだ。
「お前ら、隊の人たちに迷惑かけてないでちゃんと帰って仕事終わらせろよ。でなきゃもう二度と口きかないからな!」
言ってる事自体は何だか可愛いものだったのだが、その姿はまるきり犬と飼い主である。
一護はといえば、二人のあまりの鬱陶しさに昔こんな犬が近所にいた、なんてどうでもいい事をふと思い出しそれか
ら犬といえば昨夜妹が観ていたTVアニメでヒロインが犬の妖怪である主人公をたった一言で屈服させていたのを羨ま
しいなんて思って、ブチギレついでに言ってみただけだったのだが。
数珠なんてなくてもばっちり効いたではないか。よし、暫くはこれでいこう。
気分は上々である。
そして、まるきり犬扱いされしかも頭まで撫でられてしまった両隊長を、いろんな意味で嫌な汗を掻きながら周囲が
見ていると。
言うだけ言って去っていく一護をぼんやりと眺めていた二人だったが、やがてどちらからともなく顔を上げ、そして
ポツリと呟いた。
「「何か…癖になりそう…v」」
周囲はドン引きした。
2006.4.9 sakuto kamunabi BLEACH TOP
犬○叉かよ!みたいな…。
ほんとにアホ話…!
しかもあれ、一護が現世人っぽいのに浦原が隊長ってどういう…(爆)